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大栗博司先生「重力とは何か」(2012年5月30日第1刷発行、幻冬舎新書)

 投稿者:たけのや  投稿日:2012年 5月31日(木)19時53分47秒
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  大栗博司先生「重力とは何か」(2012年5月30日第1刷発行、幻冬舎新書)読んでみました。

昨夜読み始めましたが今朝気になって、都内出張先に少し早く(だいぶかも!)家を出て続きを読み始めました。しだいに引き込まれ一気に読まされた感じがしました。

最近大栗先生が出された「素粒子論のランドスケープ」(2012年4月20日第1版第1刷発行、数学書房刊)を先に読んでいました。こちらは、学会誌等に大栗先生が書かれた解説文をまとめたもので、難しさもまちまちなものが並んでいます。超弦理論の専門家向けに書かれたものではないので、全く歯が立たないという事はありませんが、著者の付ける難易度3段階はとてもレベルが高いです。

「素粒子論のランドスケープ」の文章の密度と比較してしまうので、「重力とは何か」の前半は、なんとなく物足らなく感じていました。しかし、だんだん引き込まれてしまいました。「個体発生は系統発生を繰り返す」ではありませんが、重力理論から超弦理論へ至る研究の道筋を解説してくださることで、読者の理解に筋道を付けてくださっています。謎の解明と、その結果新たに生まれる謎に取り組む研究者の方々の歴史的取り組みにより、素粒子論の発展の解説してくださる事は、読者にとって大変理解の助けになりました。そして、いよいよ大栗先生もその中に取り込まれてゆく事が書かれています。

1984年の超弦理論の第一次革命の年、大学院1年生であった大栗先生は、歴史的論文が船便で届く3ヶ月の遅延を、スタートダッシュで3ヶ月も後れをとる事を悔しがり、焦りを感じたと書かれています(若くして第1線に立っている事を意識されている事に驚きます。また、自分はそれほど時間を大切にしているかと反省させられる部分でもあります)。このあたりから大栗先生が超弦理論に踏み込む「キラキラした歴史の一滴」の部分で、研究者向けに書かれた文章の「素粒子論のランドスケープ」の方には語られない部分に思いました。その後の京大基礎物理学研究所での逸話は、なかなかの意気込みが伝わってくる部分です。

このあと、本書の「はじめに」にも書かれていますが「えっ!何で?」というどんでん返しもあり、読み物としてもうまく成り立っています。一気に読んでしまいました。新たな知見を得る良い本と思います。

「素粒子論のランドスケープ」の方も、歴史的解説はこちらの方が詳しく書かれているし、「湯川秀樹日記」書評にある人間味ある湯川秀樹像を書かれています。物性物理学理論の青木秀夫先生との緊張感あふれる対談等あって読み応えのある良い本です。リサ・ランドール教授、村山斉機構長との鼎談もあります。但し、判らない所は「えいっ!」と息を止めて読み進む必要があります。
 
 
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